ベストセラーになった両著の感想をつらつらと述べます。
タイトルは(敢えてなのか)単純ですが、その内容は個人心理学(アドラー心理学)というガッツリと哲学的な内容でした。
後述しますが、自己啓発本っぽくはないです。
アドラー心理学とは?
正確には、アルフレッド・アドラーによる「個人心理学」といいます。
この思想は、フロイト的な「原因論」と対照をなす「目的論」です。
アドラー心理学では人の行動を原因から説明するのではなく、目的から説明します。
例えば、「引きこもり」は過去の経験が原因で引きこもっているのではないといいます。
いろいろ考えてもやっぱり今の自分を変えたくないから、引きこもりを維持しているのです。
幸せとはなんなのか?
アドラー心理学で最も重要なキーワードのひとつは「共同体感覚」です。
これはつまり、「他者貢献」することで感じられる感覚、平たく言えば「真の幸せ」です。
本の中に、「幸せとは貢献感である」という一節があります。
他者貢献することは「人生のタスク」のひとつであり、人はそのために生きているのです。
この思想は「ありのままで良い」とか「ポジティブシンキングってやっぱ大切だよね!」のような偽薬の思想ではなく、
常に「勇気」を試され、非力な自分と向き合わざるを得ないという強烈な副作用を伴う、劇薬です。
「人生のタスク」に向き合う「勇気」、これさえあれば、人は今この瞬間から変わることができます。
この本の面白いところ
このシリーズの面白いところは、哲人と青年の対話によって議論が展開される点です。
青年=読者という認識を狙ったものでしょう。
読者が疑問に思うであろうことを、青年は哲人に質問(というかきつめに反駁)してくれています。
(個人的に好きなセリフは、青年「軽々しく同意するんじゃない、この時代遅れのソクラテスめ!」 ―『幸せになる勇気』より)
私が思うに、個人心理学は「うんうん、たしかにそうだ」とそう簡単に飲み込める代物ではないです。
だからこそ作者は、対話によって議論が進められる構成を採用したのだと考えます。
読者も「幸せ」について深く考える。
そういう意味では、この本は体裁の良い「答え」が載った自己啓発本というよりもむしろ哲学書であり、読者はただ知識をインプットするだけで終わってはいけないのでしょう。行動しなければ。
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